2022年
42年ぶりの最下位に終わった2021シーズンからの「逆襲」を誓った2022年。就任後、初のBクラスを味わった辻発彦監督だったが、「十分優勝を狙える」と、指揮を執って6年目を迎えるチームへの信頼は決して揺るがなかった。
その期待にしっかりと応えたのが投手陣だった。特に中継ぎ陣の充実ぶりは目覚ましく、増田達至を9回の守護神に据え、水上由伸、平良海馬が7回、8回をつなぐ鉄壁の必勝パターンを確立。宮川哲、森脇亮介、本田圭佑、佐々木健、ボー・タカハシ、公文克彦らの安定した投球も相まって、シーズン通しての救援防御率は12球団トップの2.75を誇った。水上、平良は揃って最優秀中継ぎのタイトルを受賞したほか、水上は育成契約からのプロ入り選手としては初の新人王にも輝き、歴史に名を刻んだ。
また、特筆すべきは本田の大躍進だろう。2021年シーズンまでは先発が主な仕事場だったが、この年は本格的な中継ぎ要員として4月末に一軍昇格。そこから12試合連続無失点を記録するなど、リリーバーとして新たな境地を見出した。「コツコツと6年間積み上げてきたものが、リリーフという形でいい方向に出た」。チーム屈指の努力家である本田の飛躍は、本人はもちろん、チームにとっても非常に価値ある収穫となった。加えて2年目の佐々木、新外国人ボー・タカハシも存在感を発揮しており、来季以降の中継ぎ陣のハイレベルな切磋琢磨が非常に楽しみとなる。
先発では、高橋光成がシーズン通して一度もローテーションに穴を開けることなく登板し、自己最多の12勝をマーク。防御率も2.20と、昨シーズンの3.78から大幅に良化し、着実なる成長を示した。そして、プロ一年目の2018年秋にトミー・ジョン手術を受けた與座海人が見事に才能を開花させ、自身初の二桁勝利(10勝)を記録したほか、助っ人のディートリック・エンスも外国人投手として2019年のザック・ニール以来となる10勝を挙げた。チーム内で3投手が二桁勝利を挙げたのは、2018年以来5年ぶりである。それぞれデビュー戦でプロ初勝利を飾ったルーキーの隅田知一郎、佐藤隼輔の両左腕の存在も合わせ、近い将来、「投手王国」構築への希望を大いに抱かせる投手陣の活躍であった。
野手でも若い選手が多数躍動した。なかでも頭角を現したのがルーキーの滝澤夏央だ。高卒であり育成契約での入団ながら、早々の5月13日に支配下登録され、そのまま一軍に昇格。守備の要・源田壮亮の負傷離脱というチームの大ピンチに「二番・ショート」に抜擢され、見事に穴を埋めてみせた。最年少らしく守備・打撃・走塁、1つ1つのプレーにおいてがむしゃらに立ち向かう姿に、チーム全体が感化され、ファンからの人気も急上昇した。
捕手では、正捕手・森友哉の負傷離脱期間中に柘植世那、牧野翔矢、ルーキーの古賀悠斗が奮闘し、好リードでチームを勝利に導いたことは非常に大きかった。勝率を大きく落とさなかったことでそれぞれが大きな自信となったことは間違いない。この経験値が必ずや今後へと生かされていくだろう。
そして、打線の中心は山川穂高だった。四番打者として大きな期待を背負うなか、開幕から5試合で4本塁打と最高のスタートを切った。その後も、好不調はあったものの、開幕前から「最高の準備をする」を自らテーマに課し、初めて年間通して一つのルーティーンを貫徹したことが結実。3シーズンぶりの40本越えとなる41本塁打、90打点で本塁打王、打点王の二冠を達成した。それでも、主砲は悔しさを滲ませる。「あれだけ“怪我だけは絶対しない”と気をつけて細心の注意を払って準備していたのに、14試合も欠場した。四番打者としてはあり得ない」。この悔しさを教訓に、必ずや2023年は全試合出場を果たし、チームを優勝へと導いてくれるはずだ。
チーム全体としては、指揮官の言葉通り、終盤まで優勝争いを繰り広げた。歴史に残るほどの大混戦のなかコツコツと貯金を貯めていき、7月後半から約1ヶ月間、首位を走り続けた。が、いざ足固めをしようとした9月に入り二度の3連敗、7連敗を喫し、優勝戦線から離脱することに。この失速には、21年のプロキャリアを誇る栗山巧も、「あそこまでいっていたのに。優勝と(脱落は)ほんま紙一重なんやなと思いました。分かれ目はあの一週間、もっと言えば1試合、2試合やったと思うし。1カード、2カードぐらいでグッと差が開いてしまうんやと、改めて思いました」と“勝負どころ”で踏ん張れなかったことを心底悔しがった。
激しい順位争いの中、最終的には3位でレギュラーシーズンを終える結果となった。前年が最下位だったことを考えれば「健闘」ともいえなくはないが、2019年以来のクライマックスシリーズ進出も2連敗を喫し、日本シリーズ進出が叶わなかったことも含め、チームの誰一人としてこの成績に満足している者はいない。雪辱は、2023年へと持ち越された。
シーズン終了後、2022シーズン限りで6年間続いてきた辻発彦監督の勇退が発表された。2017年、3年連続Bクラスに沈んでいたチームを再建すべく指揮を託され、1年で2位へと押し上げると、翌2018年、2019年には圧倒的な得点力を誇る「打ち勝つ野球」でリーグ2連覇を達成した。その一方で、「投手中心にディフェンスがしっかり守って、1点、2点を取りながら逃げきるという野球が一番の基本(辻監督)」と、一般的に「水物」といわれる打撃に頼るのではなく、少ない得点でも守り抜き、勝ちきれるチームを作るべく、高橋光成、松本航、今井達也ら投手陣を辛抱強く一軍で起用し続け、成長を促した。その成果が形となり、最終年の2022年には投手力中心の戦いを披露したことは、次代につながる辻監督の大きな功績のひとつと言えよう。
そして、2023年からのライオンズの未来を託されるのは、松井稼頭央新監督だ。自身、現役時代ライオンズで何度も優勝を経験し、盗塁王、最多安打、1998年シーズンMVPなど数々のタイトルも獲得。渡米し7年間MLBでのプレーも経験し、実績は申し分ない。さらに2018年に現役を引退してからは、翌年から二軍監督として3年、2022年はヘッドコーチとしてライオンズを指導し、一軍・二軍問わず大半の選手を熟知しているアドバンテージも含め、まさに適任だ。そのバックアップには、2022年限りで引退を決めた内海哲也“投手”も新たに“二軍投手コーチ”として就任する。「ライオンズで4年も現役をやらせていただいた恩は、どういう形であれ、必ず返したいと思っていました。4年間選手として活躍できなかった分を、若い選手たちに僕のパワーをすべて注いで、ライオンズを優勝に導く良いピッチャーを育てたいなと思います」。読売ジャイアンツ時代、2年連続最多勝を獲得し、「エース」として君臨した勝者のメンタリティーを若獅子投手陣に植え付けてくれるだろう。
一時代を築いた辻監督に心からの労いと感謝を伝えるとともに、日本一の悲願は松井監督率いる新生ライオンズに引き継がれていくこととなった。
(上岡 真里江)
スローガン
Change UP!
取得タイトル
最優秀新人賞
最優秀中継ぎ投手賞
最多本塁打者賞
最多打点賞
ベストナイン賞
- 一塁手部門
ゴールデン・グラブ賞
主力選手成績
投手
選手名 | 防御率 | 試合 | 勝 | 敗 | セーブ | ホールド | 完投 | 完封 | 投球回 | 失点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
高橋 光成 | 2.2 | 26 | 12 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 175.2 | 48 |
與座 海人 | 2.88 | 20 | 10 | 7 | 0 | 0 | 1 | 1 | 115.2 | 39 |
エンス | 2.94 | 20 | 10 | 7 | 0 | 0 | 1 | 1 | 122.1 | 44 |
松本 航 | 3.19 | 21 | 7 | 6 | 0 | 0 | 1 | 0 | 129.2 | 49 |
平良 海馬 | 1.56 | 61 | 1 | 3 | 9 | 34 | 0 | 0 | 57.2 | 15 |
水上 由伸 | 1.77 | 60 | 4 | 4 | 1 | 31 | 0 | 0 | 56 | 13 |
本田 圭佑 | 1.97 | 45 | 4 | 2 | 0 | 20 | 0 | 0 | 50.1 | 11 |
増田 達至 | 2.45 | 52 | 2 | 5 | 31 | 5 | 0 | 0 | 51.1 | 14 |
打者
選手名 | 打率 | 試合 | 打数 | 得点 | 安打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 打点 | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
山川 穂高 | 0.266 | 129 | 448 | 62 | 119 | 17 | 0 | 41 | 90 | 0 |
外崎 修汰 | 0.215 | 132 | 478 | 54 | 103 | 25 | 3 | 12 | 47 | 10 |
源田 壮亮 | 0.266 | 108 | 414 | 39 | 110 | 8 | 8 | 2 | 17 | 12 |
森 友哉 | 0.251 | 102 | 412 | 45 | 92 | 21 | 3 | 8 | 38 | 2 |
オグレディ | 0.213 | 123 | 404 | 42 | 86 | 24 | 0 | 15 | 46 | 2 |
愛斗 | 0.243 | 121 | 366 | 34 | 89 | 19 | 0 | 9 | 28 | 9 |
順位
順位 | チーム | 試 | 勝 | 敗 | 分 | 率 | 差 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
優勝 | オリックス | 143 | 76 | 65 | 2 | 0.539 | - |
2位 | 福岡 ソフトバンク |
143 | 76 | 65 | 2 | 0.539 | 0 |
3位 | 埼玉西武 | 143 | 72 | 68 | 3 | 0.514 | 3.5 |
4位 | 楽天 | 143 | 69 | 71 | 3 | 0.493 | 6.5 |
5位 | 千葉ロッテ | 143 | 69 | 73 | 1 | 0.486 | 7.5 |
6位 | 北海道日本ハム | 143 | 59 | 81 | 3 | 0.421 | 16.5 |
ユニフォーム
ライオンズ・クラシック2022ユニフォーム
2022年シーズンに蘇るのは、東尾修監督時代1996年~2001年使用のビジターユニフォーム。デザインの選定を日本球界初のファン投票で行ったユニフォームでもある。
プロ初登板、初先発で初勝利の鮮烈なデビュー戦を飾った怪物松坂大輔が着用したユニフォームとしても思い出深い、21世紀へのジャンプ台だった時代のユニフォームを令和のライオンズナインが受け継ぎ、『ライオンズ・クラシック2022』の試合に臨んだ。
WILD WILDユニフォーム
逞しい獅子の強さを表す爪痕や、仲間と競い合い、しのぎを削るグラウンドを颯爽と駈ける選手をイメージした、大自然のワイルドさ、灼熱のサバンナを想起させるカーキを基調としたユニフォーム。
他に類を見ない、ライオンズらしさも忘れないカラーリングのこのWILD WILD ユニフォームをファンと共に纏い、戦い抜く決意と団結を示した。
L-FRIENDSユニフォーム
すべての野球場がこどもたちの笑顔と未来への希望に溢れる場所であり続け、 誰もが安心して暮らせるサステナブルな社会の実現をできるよう願いを込めて制作された。
左袖に「L-FRIENDS」のロゴマーク、またロゴマークに使用している「赤」、「オレンジ」、「青」、「緑」の4色を使用して制作されたこのユニフォームは「L-FRIENDSシリーズ」と題して開催された3試合で着用した。
『SAVE THE EARTH Lions GREEN UP! DAY』キャップ・ヘルメット
2020シーズンより立ち上げた「SAVE THE EARTH Lions GREEN UP!プロジェクト」の一環として「SAVE THE EARTH Lions GREEN UP! DAY」を開催。3年目にあたる2022シーズンも開催され、監督・コーチ・選手がオリジナルキャップ・ヘルメットを1日限定で着用した。
『SAVE LIONS DAY』キャップ・ヘルメット
2019シーズンより、チームのシンボルである“ライオン”を絶滅の危機から救う保全活動であるSAVE LIONS プロジェクトを実施。
活動4年目となった2022シーズンも『SAVE LIONS DAY』を開催し、当日は本プロジェクトのロゴ入り「オリジナルキャップ・ヘルメット」を着用して試合を行った。
『SAVE THE HOPE ライオンズ オレンジリボン運動デー』キャップ・ヘルメット
L-FRIENDS活動の一つの柱である「こども支援」の基本理念である”青少年の健全育成”の一環として、こども虐待防止・オレンジリボン運動に賛同し2019年より『SAVE THE HOPE
ライオンズオレンジリボン運動デー』を開催。
2022シーズンも継続して開催され、監督、コーチ、選手がオレンジリボンのロゴ入りオリジナルキャップ、ヘルメットを着用して試合を行った。