2019年
終盤の大逆転劇でリーグ2連覇!

「正直、今年は(優勝が)厳しいかなと思った」。

優勝会見の席で語られた辻発彦監督の言葉に、今シーズンの戦いぶりが凝縮していたと言えよう。10年ぶりのリーグ優勝を成し遂げながらも、日本シリーズ進出を逃した昨季の悔しさを晴らすべく挑んだが、春季キャンプ時から先発ローテーション候補投手に離脱者が相次ぐ非常事態。さらに開幕3連敗と、不安を抱えての船出となった。

その懸念を覆してくれたのが、自慢の打線だった。3年連続4度目最多安打受賞の秋山翔吾、ベストナイン選出の源田壮亮で始まる超強力打線は今季も健在。一時期三番を担っていた外崎修汰は「常にチャンスを作った上で、自分に回ってくる」と、自己最多90打点の一因として感謝した。

なかでも18年目を迎えた中村剛也の存在は際立っていた。8月11日千葉ロッテ戦から完全に四番に座ると、打率.304、10本塁打、42打点の大活躍。「ほかにも、ホームランを打てる選手はたくさんいるから」と、『ホームランを打たなければ』の意識を軽くしたことで、状況によっては、コンパクトなバッティングにシフトし、勝負強さが格段上昇した。シーズン通しても、135試合出場、キャリアハイの打率.286、30本塁打、123打点の成績で、4年ぶりの打点王のタイトルを獲得。「これぞ四番、という姿を示してくれた」と、指揮官も脱帽した。7月19日オリックス戦で放った、通算400号本塁打となるサヨナラ弾は、記録とともに自身はもちろん、ファンの記憶にも残る至極の一本となった。

その中村が「状態が悪くても、コンスタントにホームランを打っていた」と賛辞を送るのが山川穂高である。「とにかく苦しかった。打席に入るのが怖かった(山川)」と明かすほど苦悩しながらも、2年連続の40本超えとなる43本で、昨年に続き本塁打王に輝いた。また、「どすこい」パフォーマンスでも、スタンドのファンを大いに盛り上げた。

足で魅せてくれたのが金子侑司だ。自ら目標に掲げた「一番打者」は貫けなかったが、打順九番での41盗塁、最多盗塁のタイトル獲得に首脳陣は大絶賛。数以上に、「チームへの貢献」にフォーカスした内容の濃い盗塁は、辻野球に欠かせぬ武器となった。また、スピードを生かした守備範囲の広い外野守備での貢献度も非常に高かった。

そして何よりも圧巻だったのが森友哉である。開幕から打撃好調で、シーズン通して大きな調子の波を作らなかった。打率.329、23本塁打、105打点はいずれもキャリアハイの成績。日本プロ野球史上4人目となる『捕手での首位打者』の偉業を達成した。また、守備でも、出場135試合中126試合で先発マスクを託され、見事にチーム優勝に導いた。とはいえ苦悩も多く、失点、防御率が嵩み、「自分の責任」と眠れぬ日々を幾度も過ごした。だが、逃げずに学び、投手陣とも対話し、乗り越えた。その姿勢にチームの誰もが信頼を置き、名実ともに『正捕手』の地位を得た。パ・リーグのシーズン最優秀選手賞(MVP)も獲得し、まさに“ライオンズの象徴”となった。

一方、投手陣では、ザック ニールの存在は絶大だった。源田が遊撃を守るチームに、打たせてアウトを取る投球スタイルが見事にフィット。二軍での再調整を経て6月に一軍に上がってからは、自身7連勝を含む11勝0敗。シーズン通しても17試合先発12勝1敗と抜群の安定感を誇り、優勝の立役者となった。

中継ぎ2枚看板の活躍も欠かせなかった。「昨年何も貢献していないので」と、リベンジに燃えた増田達至は、守護神に返り咲き、防御率1.81と勝利試合を堅実に締めくくった。勝敗分かつ重要な場面で常に名前が呼ばれた平井克典は、81試合に登板。パ・リーグ新記録を樹立した。

若手では、本田圭佑、平良海馬の台頭が著しく、来季以降の飛躍に大きな希望を抱かせた。高橋光成、今井達也、松本航といった将来のエース候補も、着々と経験値を積んだ。森が常に口にする「バッテリーで勝てる試合」を増やすべく、それぞれの精進に期待したい。

残念ながら、今季もCSでソフトバンクに敗れ、日本シリーズ進出は叶わなかった。多くの選手が、「優勝したのに、悔しさの方が残る」と口にしているとおり、敗戦でのシーズン終了に無念さは募る。だが、最も価値ある『リーグ制覇』を2年連続で成し遂げているのである。「胸を張るべき」と、辻監督。打撃タイトル6部門中、5部門がライオンズ選手だったことが、今季の躍動ぶりの何よりの証明だろう。今年も、たくさんの安打あり、本塁打あり、走塁もありと、『どこからでも点を取れる魅力的な野球』はファンを熱狂させた。

とはいえ、満足している選手は誰ひとりとしていない。さらなる飛躍成長、そして、今年も見られなかった大舞台の景色を、来シーズンこそは!

(上岡 真里江)

スローガン

CATCH the GLORY 新時代、熱狂しろ!

取得タイトル

最優秀選手賞

最多打点賞

最多本塁打賞

最多安打者賞

秋山 翔吾

プロ野球最優秀バッテリー賞

スカパー!サヨナラ賞 7月度

スカパー!サヨナラ賞 9月度

オールスターゲーム

第1戦 最優秀選手賞

森 友哉

第1戦 敢闘選手賞

山川 穂高

第1戦 ホームラン賞

森 友哉山川 穂高

ベストナイン賞

捕手部門
森 友哉
一塁手部門

山川 穂高

三塁手部門

中村 剛也

遊撃手部門

源田 壮亮

外野手部門

秋山 翔吾

大樹生命月間MVP賞

3・4月度 野手部門

山川 穂高

5月度 野手部門

秋山 翔吾

8月度 野手部門

森 友哉

9月度 投手部門

ニール

ゴールデン・グラブ賞

遊撃手部門

源田 壮亮

外野手部門

秋山 翔吾

主力選手成績

投手

選手名 防御率 試合 セーブ ホールド 完投 完封 投球回 奪三振 失点
ニール 2.87 17 12 1 0 0 0 0 100 1/3 51 38
高橋 光成 4.51 21 10 6 0 0 1 0 123 2/3 90 77
松本 航 4.54 16 7 4 0 0 0 0 85 1/3 65 47
今井 達也 4.32 23 7 9 0 0 1 1 135 1/3 105 74
本田 圭佑 4.63 16 6 6 0 0 0 0 91 1/3 53 48

打者

選手名 打率 試合 打数 得点 安打 二塁打 三塁打 本塁打 打点 盗塁
森 友哉 0.329 135 492 96 162 34 2 23 105 3
秋山 翔吾 0.303 143 590 112 179 31 4 20 62 12
中村 剛也 0.286 135 496 69 142 30 0 30 123 2
源田 壮亮 0.274 135 540 90 148 23 6 2 41 30
外崎 修汰 0.274 143 533 96 146 27 6 26 90 22
山川 穂高 0.256 143 524 93 134 20 0 43 120 1
栗山 巧 0.252 123 409 35 103 21 0 7 54 0
金子 侑司 0.251 133 463 60 116 8 1 3 33 41

順位

順位 チーム
優勝 埼玉西武 143 80 62 1 0.563 -
2位 福岡ソフトバンク 143 76 62 5 0.551 2
3位 楽天 143 71 68 4 0.511 7.5
4位 千葉ロッテ 143 69 70 4 0.496 9.5
5位 北海道日本ハム 143 65 73 5 0.471 13
6位 オリックス 143 61 75 7 0.449 16