11月26日に会見を終えた新入団選手たち。来季からライオンズの一員になる彼らのことをファンの皆さまにより知っていただくために、今年も昨年に引き続き担当スカウトインタビューを実施！
第2弾は谷口選手！担当である鈴木スカウトに、直接お話をお伺いしました！

まさに、「秘密兵器」だ。ドラフト前にNPB12球団から届いた調査書はライオンズのみ。投手で最速153キロの直球が武器だったが、野手として育成2位で指名された。谷口朝陽選手はどんな選手なのか。担当の鈴木敬洋スカウトは声を弾ませる。「身体能力が抜きん出ています。身長185センチと体格に恵まれていますが、50メートル走は5.8秒と足が速い。あの体のサイズでスピード感がある選手は少ない。遠投も125メートル。この数字以上に実際にプレーを見たらインパクトが強い。今年が19歳と伸びしろ十分です。来年の春季キャンプでは、打撃練習が間違いなく話題になると思います」。

強豪・広陵高で公式戦出場は、3年春の県大会で背番号「1」をつけて1試合登板したのみ。ベンチ外の期間が長かったが、最速145キロの直球で将来を嘱望された。四国アイランドリーグplus・徳島でトレーニングを積み、体に厚みが増すと最速153キロと一気に球速がはね上がった。ただ、シーズンで登板機会は3試合のみ。変化球の精度、制球力など磨かなければいけない課題が多く、まだまだ粗削りだった。投手と同時に身体能力の高さを買われ、夏場から野手にも挑戦。鈴木スカウトは今年8月に打撃練習を見て衝撃を受けた。

「バックスクリーンの横まで飛ばしていたんですよ。なんであんなに飛ぶんだろう……と。打ち方はまだ完成していないし、高卒1年目にもかかわらず木製のバットであれだけ飛ばす選手はなかなかいないですね」。まだ実戦で打てるレベルには到達していない。技術的な修正点もたくさんある。だが、ボールを遠くへ飛ばすのは天性の才能だ。足が速く肩も強い。まぎれもない「金の卵」だった。

谷口選手は穏やかな口調で物腰が柔らかい。素顔は謙虚な好青年だ。鈴木スカウトは「優しいのが彼の魅力。かわいいんですよ。『鈴木さん』って呼ばれたから、『なに？』って聞いたら、『いや、何でもないです』ってニコニコしていて。人を惹きつける魅力がある。活躍したらファンから愛される選手になると思います」と話す一方で、プロの世界で成功するための助言も。「気持ちは分かるんですが、性格がおっとりしているので、『もっとガツガツしてほしい』と伝えています。同じ育成入団で高卒1年目に支配下昇格した滝澤夏央選手も穏やかに見えますが、我が強いところを持っている。芯の強さですね。そういう部分を持っていないとやっていけない世界です。滝澤選手には『谷口くんの面倒を見て、かわいがって欲しい』と連絡を入れました。プロで成功するためには周りに流されず、自分を持つ精神的な強さが必要です」。

鈴木スカウトの思いは届いている。ベルーナドームで11月26日に開催された新入団選手発表会。谷口選手は「目標はトリプルスリーを獲って、『松井稼頭央監督2世』になることです」と大きな瞳を輝かせ、力強く宣言した。松井監督もPL学園のエースとして名を轟かせたが、西武に入団後は内野手で実力を磨いた。2002年に打率.332、36本塁打、33盗塁でトリプルスリーを達成するなど、走攻守3拍子そろった名遊撃手として活躍。目標とする松井監督の下でプレーできる。運命の糸で結ばれていたのかもしれない。

今回のドラフトで谷口選手、支配下5位の宮澤投手、育成1位のシンクレア投手と徳島から3選手が入団した。鈴木スカウトは言葉に力を込める。

「宮澤くんや、シンクレアくんには『悔いのないようにやり切ってほしい』と伝えています。全部を出し切ったほうが後悔しない。でも、谷口くんは違います。彼の場合はまだ真っ白な画用紙のような状態です。すぐに結果を出せる立場ではない。教えられたことを焦らず一つずつコツコツ習得して、土台を作るようにと伝えています。素材は抜群なので、自分がどういう選手になりたいかイメージしながら、目標を一つずつクリアすることが大事だと思います。」

育成出身でトリプルスリーを達成した選手はまだ現れていない。無限の可能性を秘めた谷口選手の新たな挑戦が始まる。

「まずは俊足、強肩で同じタイプの長谷川選手を目指し、将来的には3拍子そろった大型内野手になってほしいです。」